AIで当然なくなる仕事がある。それは法務の契約管理の仕事だ!

今回AIでなくなる仕事について考察して欲しいという依頼があったので応募した。

 

中国進出時(合弁会社設立、株式譲渡)の法的サポートや中国現地での法務部門の立ち上げ責任者なども担当した。勤続年数は10年を超えており、現在32歳である。

 

AIでなくなる法務の仕事を考えた

 

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すぐになくなる事はないと思うが、AI導入の取り組みは既に始まっている。現時点ではAIが得意とする分野は反復継続的な業務に限られていると思われる。

 

現在、私が対応している業務で、まずAIに置き換えられると思われるのが契約審査業務であろう。

 

契約書には雛形が存在しており、それらの契約の基本パターンをAIに認識させることにより、基本パターンから外れた条件に関して修正を自動的に行っていく事が可能になってくると思う。

 

現在、契約審査は多くの法務部員が時間をかけて一つずつ丁寧に審査しているが、個別能力のばらつきもあり、業務効率も非常に悪い。

 

更に、契約審査にいくら時間をかけても、実際に契約書が丁寧に読み込まれる機会(すなわち、当該案件に関して紛争が起こり、

 

裁判所などで契約内容がじっくりと確認される機会)はほとんど存在しないのが実情だ。

 

実際私自身もこの10年間で何千件もの契約審査を行ってきたが、実際に訴訟になった契約は一度も無い。

 

個人的にこれほど非効率な業務は無いと言っても過言ではないと思う。

 

従って、AIにより、大きな事故にならない程度に確認をさせておくことで大きな業務効率化を達成できるため、契約審査へのAI化はどこの法務部門・弁護士事務所でも検討されている事ではないだろうか?

 

また、法律調査や訴訟対応等も非常にAI化されやすい分野だと思うし、事実、AI化の検討が進んでいると思う。

 

過去の判例などをAIに学習させ、その判例に基づき、合理的な範囲で判断を下す。

 

以前、弁護士の腕はどれだけの判例を覚え、それを裁判で応用できるかにかかっていたが、AIの登場により、非常に簡単に過去の判例を引出し、それを応用できるようになってしまった。

 

AI時代に法務の仕事で重要になって来ることは?

 

たとえば、契約審査においてAI化が進んでいるといっても、非常に複雑な条文の交渉はAIではまだまだ対応が出来ないと思われる。

 

雛形化が容易な秘密保持契約書や簡単な業務委託契約書、販売契約書等の検討については、積極的にAIに置き換えていくべきだと思うが、

 

長期的な交渉や各当事者の利害関係が絡む合弁契約の交渉等では残念ながらフレキシブルな調整が出来ないAIではまだまだ代用が難しいと思われる。

 

もちろん、交渉当事者の双方がAIを用い、AIにビジネス交渉条件をインプットし、AIが提示した条件に無条件で合意する、という形ならば複雑な交渉なども逆に円滑に進むかもしれないが・・・。

 

残念ながらAIには現在人間がやっている仕事を効率的にスピーディに対応する事は可能だが、人間が出来ない事を行う能力まではまだ達していないと思われる。

 

これについては、法律調査や判例分析などについても同じことが言える。

 

法律は常に改正が行われている。

 

それに伴い、判例の運用なども変化していく、このように、判例をどのように変えていくのか、法律の解釈をどのように変えていくのか?

 

という社会ルールの変遷の部分についてはAIで対応する事は難しい

 

AIで置き換えられる部分は、あくまでもある程度の条件下である一定の結論が出せる、すなわちパターン化が可能な部分であるという事を認識し、

 

人間にしかできない部分(契約条件の細かい調整、新しい法律への解釈)に特化していく事で、より建設的なAIの利用が出来ると思う。

 

AIに今の仕事が取って変わられることは決してネガティブな事ではない、問題は非効率的でAIに置き換えられる部分をしっかりと判断していく事が重要なのだと思う。

 

AI時代に社会人として生き残るスキルとは?

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 AIは万能ではないし、まだまだ改善の余地は多いと思う。

 

同時に、AIが持つ可能性は非常に大きいとも思う。前述のとおり、AIを敵対化する考え方(すなわち、自分の仕事を奪ってしまう存在ととらえること)は課題があり、

 

AIをどのように使う事で、社会の負荷を減らしていけるかを考えることが非常に重要になってくる思う。

 

ただ、残念なことにAI社会の導入により人々の格差は広がってしまうのではないかと思う。

 

残念ながら、パターン化した定型的な仕事をしている人たちは全てAIに置き換わる時代が来てしまうと思う。

 

銀行の窓口、医療受付、レジの受付、タクシーの運転手も将来は自動運転した車に置き換わられてしまうかもしれない。

 

このような人々にとってはAIは非常に驚異的なものに移ると思う。このような時代を生き抜いていくためには、AIを使う側の人間になるか、AIに置き換えることが出来ない最新領域の部分に特化した生き方をしていく事が重要になってくると思う。

 

たとえば、医療技術においても、最新の医療技術はAIでは実施できないと思うし、AIが対応できない領域は必ず存在すると思う。

 

AIはあくまでもプログラムでしかない。

 

よって、プログラムされたアルゴリズムの中から最適解を出す事しかできない。しかし、その能力は人間をはるかに凌駕した世界にいる。

 

AIを有効に使いこなすことが出来れば、我々はパターン化された意義の薄い苦痛な仕事から解放される。

 

そして、より有意義で価値のある事に人的・物的な資源を投入する事が出来る。

 

AIの価値を正しく認識、自分の周りでどのようにAIを活用できるのかを真剣に考え、AIに支配されない生き方が必要になってくると思う。

 

我々に残された時間は少ない。未来に向かって自分の価値を高めなければこの先給料が上がる保証もなければ、仕事をつづけさせてもらえる保証もないのだ。

 

意識の持ち方で明暗は分かれるだろう・・・。